異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。


大丈夫、セリス王子ならきっと約束を破らない。ずっとあたしのそばにいてくれるって、言ってくれたから。


「放して!セリス王子なら大丈夫だもん!約束してくれた。ずっと近くにいるって……あたしを護るって。だから……」

「ナゴム!」


バチン、と頬に鋭い痛みが走る。反射的に顔を上げれば、痛みを抱えたロゼッタさんと目が合った。


「セリスは……もう……死んでる。ナゴム、セリス王子はもう死んだんだ!!」


あたしの肩を掴んで揺さぶった後、ロゼッタさんはあたしの身体をギュッと抱きしめた。


「ナゴム……ごめん……間に合わなくて……ごめん」


暖かいしずくが、あたしの背中に染みる。


ロゼッタさんの言葉が、虚ろなあたしの中に鋭く食い込む。


“セリスハシンデル。モウシンダンダ”


死んだ……


誰が?


誰が、どうして?


あたしのなかに、うっすらと蘇るのは――セリス王子の最後の微笑み。


“よかった……間に合いました”


あたしを護るために……


セリス王子は、死んだ。


「あ……」


あたしの口から、声が漏れる。


「うわぁあああああっ!!」


真実を受け入れた瞬間――あたしは狂ったように泣き叫んだ。


「ごめんなさい、ごめんなさい! ごめんなさい!! ごめんなさい!!」

「ナゴム、ナゴムは悪くない! なにも悪くないよ!」


あたしはロゼッタさんにすがりつきながら、セリス王子に何百回も謝り続けた。


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