異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ナゴム、危ない!」
すぐそばでガギン、という音が響いて、ロゼッタさんが斧を振るい応戦するのが見える。
レヤーも慌てて奇妙な躍りを踊るようにステップを踏みながら、何とか術で攻撃を防いだりと対応してる。
身体を、動かさなきゃ……。
みんなが戦っているのに、あたしだけがじっとしてるなんて。自分の身は自分で護るって言っておきながら、なんて情けない体たらくだろう。
剣を、握りしめる。
だけど、指が震えて柄が握れない。軽い加工の剣なのに、いつもの十倍は重く感じる。
「うあっ!」
赤が、舞う。
ロゼッタさんが足を斬られ、あたしの方まで血が飛び散った。
「ロゼッタさん! うわぁああ!!」
レヤーの足元が、凍結化してく。文字どおり凍りついて、徐々に動きが鈍くなる。
「そんな……こんな【闇】の力が……いったい、誰が?」
レヤーの脚が完全に凍りつき、羽毛が凍結し始める。ロゼッタさんも……なのに。
なのに、どうして……あたしは……?
「う……あぁああ!」
剣を握りしめたあたしは、ロゼッタさんの前にいる敵にがむしゃらに突っ込んだ。不思議な動きをする武器をはね飛ばし、彼女を庇うけど。
左右から挟撃されて、対応しようと動いた瞬間。不意を突かれて真正面から激しい攻撃を受けた。
ギリギリに踏ん張って受け止められたけど、その次の瞬間挟撃してきた2人に剣をはね飛ばされた。
巫女の力が使えないなら、せめてこれだけでもと……自分で決めて……頑張ってきたのに。
どうして……
どうして、あたしはこんなに弱いの?
どうして、あたしはこんなにも力がないの?
結局……なにもできない。
ただぐずぐずと泣いてうずくまるだけで。とんでもない役立たず。
やっぱり、あたしには何の価値もない。
なにもない、何もできない空っぽな……。