異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
血まみれのロゼッタさんが、地面に崩れ落ちる。
レヤーが完全に凍って動かなくなった。
炎はますます広がって、あたしの周りを無数の刺客が取り囲んできた。
「……いらない……こんなの……こんな役立たずな自分なんて……いらないよおッ!!」
消えたい……
誰かを不幸にするだけの、自分なんて。
いらない。
こんな無力でちっぽけな自分なんて。
誰か……
お願い、だから。
あたしを、消して。
そう願った瞬間――
心臓とは違うものが、胸元でドクンと脈打った。
《――そなたの、真の望みか?》
嗄れた重々しい声が、あたしの中に問いかけてくる。
《それが、そなたの真の望みか?》
「望み……あたしの」
《そうだ。そなたが真に望むであれば叶えよう……その血と引き替えに》
「血……あたしの……?」
《是》
その声は、何の感情も揺らぎもなく答えを寄越す。
《そなたの血には、その価値がある。我が力を与えるに相応しい価値が。そなたが望まば、我は世界を焼きつくそうぞ》
「焼き……尽くす……世界が……消える?」
《是》
世界が、消えてなくなる。
こんな辛い思いしかしない世界が……。
それは、今のあたしにとってひどく甘美な誘惑だった。
(消えたい……消して。こんなあたし……なんて。いらない。自分なんて、いらない!!)
ガクガクと震える両手で、自分を抱きしめる。
呼吸が、苦しい。 冷たい汗が絶え間なく流れて、体が震える。
ひんやりした指先は、自分のものじゃないみたいだった。
ドクン、ドクンとあたしの心臓の鼓動に合わさるたびに、脈動は力強さを増す。炎にまかれながら、あたしはその望みを口にしようとした。