異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
バルドが……あたしを殺す?
あまりにも現実味が無さすぎて……でも。彼が放つ殺気は本物で。
彼は、バルドは――戦いの最中に敵を見る時と同じ目を、あたしへと向けてきた。
つまり、彼の中であたしは敵と同じと見なされたということ。
「あは、ははは……」
これだけ、最低なことってあるだろうか?
初恋をした相手は異世界の皇子様で、その人は別の女性が好きで。まったく相手にされないばかりか、敵になり殺されるなんて。
なんて、滑稽なピエロなんだろうあたしは。
ただ黙ってそこにいればいい人形以下、じゃない。
誰かに唯々諾々と従い、役に立つこともできないばかりか。足を引っ張って迷惑や負担ばかりかけて。
こんなあたしが……誰かの命と同じ価値のはずもない。
たとえあたしが100人いたって、その辺りを歩いてる一般人より価値がないんだ。
「あは……ははは」
なんで、自分だって頑張れば誰かの役に立つなんて思っちゃったんだろう。こんなにも惨めで、誰かの命を奪うような……そんな傍迷惑な存在なだけ、だったのに。
ただ、ただ情けなくて悔しくて。
疲れた……
もう、いい。
もう……何も考えたくない。
あたしが生きていたって、誰かが死ぬだけなら。唯一できることは決まってる。
「いいよ……」
あたしはバルドに向けて膝を折ると、そのまま頭を下げて彼に請うた。
「……終わらせて、あなたの手で。バルド……お願い。あたしを……殺して」