異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「……ああ」
バルドは短く答えると、剣を構える気配がした。殺気は消えず、すべてがあたしに向けられている。
――これで、終わる。
あたしがいなくなれば、周りが巻き込まれることもない。古代の最終兵器だって無意味になる。最後の水瀬の巫女であるあたしが消えれば、古代兵器は二度と使用できずに平和が保たれる。
これしか、ないんだ。
あたしが唯一できること……
こんな間際になってわかるなんて、おかしくて笑えてくるけど。
でも、よかった。
あたしが唯一出来ることは、水瀬の血を断ってその因縁に決着を着けることだった。
だから、きっと。
誰からも愛されずに、必要ともされなかった。
これが、あたしの運命。自分でも決めたこと。
最後の巫女として、血を遺さずに消えて。初代の封印を確かなものとする。
でも、せめて――
ふとセリナとユズの幸せそうな笑顔を思い出す。
たった一度だけで良いから、幸せな恋をしたかった――。
きつく閉じた瞼から、熱いものが溢れた瞬間――
あたしのお腹に、灼熱の痛みが走った。