異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「うっ……」
あたしは痛むお腹を押さえながら、剣を支えに何とか立ち上がろうとした。
止めなきゃ……。
バルドとハルトの戦いを、どうにかして止めないと。
今は、仲間同士で戦ってる場合じゃないのに。
“セリスや秋人の想いを無駄にするのか!”
ハルトの悲痛な叱責が、ジリジリとあたしの胸を焼く。もう動かないセリス王子の体を見て、そのまま項垂れた。
「ごめんなさい……セリス王子。あなたが助けてくれたのに……勝手に命を断とうとした」
ブルブルと震える両手で剣の柄を握りしめ、膝に力を入れる。ふらつく体を叱りつつ、剣を杖がわりに立ち上がった。
相変わらずお腹の傷は激痛と出血をもたらしてくる。けど、空いた手で押さえてまっすぐに戦う2人を見据える。
すると、再び声が聴こえた。
《我に血を、与えよ》
あの、重々しい嗄れた声は、あたしに意味がわからないことを言う。
「血……って」
《唯一無二の血、水瀬の巫女としての力の源……さすればそなたの望み、我が叶えようぞ》
「あたしの……望み」
《そなたが魂より望まば、我は力を貸そう》
「……そんなの」
そんなのは……決まってる。
あたしは、幸せになれなくていい。
みんなが無事で、幸せになって欲しい。
あたしの望みは、いつもただそれだけだった。