異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「あたしの願いは……みんなの幸せ……あたしは良いから、みんなが幸せになって欲しい……ッげほ!」
息苦しくて咳き込むと、そのままわずかな血が唇から流れた。
それをギュッと手のひらで拭うと、その声へ願う。
「お願い……あたしの血ならいくらでもあげる! だから……今は、みんなを助けて!!」
あたしが精一杯の力を込めて叫ぶと――胸元から目映い光が発された。
それは、緋色。血のような、炎のような。どこまでも透明で禍々しくもあり――同時に畏れを抱かせる紅蓮。
《……そなたの望み、確かに聞き届けた。古(いにしえ)よりの契約に従い、我は血を対価としそなたへ力を貸そう》
ドクッ、と一気に血がそちらへ集まるのを感じた。頭が真っ白になって、膝から力が抜けてそのまま再び体が崩れ落ちる。
急激な失血にひどい貧血状態だったのかもしれない。ただ……意識が消えゆく中で見えたのは――紅蓮の炎。敵を焼き尽くす業火。
【闇】すら喰らい尽くすその灼熱は、生き物のように敵の全てを包み込むと舐め尽くす。
「できた……あたしでも……できたよ……」
体がゆっくり冷えていく中で、眠りに落ちるようにスッと意識が消えていく。
誰かが、あたしの手を握りしめていたのは……きっと気のせいだ……きっと。