異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
――駄目だよ。
あの声に全てを委ねてはいけない。
あれは魔物。きっと君の命を食らいつくしても足りず、そのまま全てを壊してしまう。
「……っ!」
ひんやりと冷たい感触で目が覚めた。
ハッと開いた目に映ったのは、白い天井と金色の天蓋。見慣れない光景に何度か瞬きすると、すぐにキキの顔が見えた。
「和さん、気がつかれたんですね。気分はいかがですか?」
「……ちょっとお腹が痛い」
無意識に痛む場所を庇っていたようで、右手が鳩尾辺りを押さえてた。それを見たキキはそうですね、と頷く。
「ひどい傷でしたから、癒すのにかなりかかりましたけど。幸い痕は残らないそうですよ」
何だか、デジャブってやつですか。以前にもこうやってキキに看病してもらったっけ……なんて思い出した。
「喉が渇いてるでしょうから、白湯を用意しました。お飲みになります?」
「あ……うん、ありがとう」
なにか、大事なことを忘れてる気がしたけど。今は喉がカラカラだから、体の欲求に素直に従う。
キキに助けてもらいながら上半身を起こし、白湯をゆっくりと口に含む。
器を持つことすら難しくて、申し訳ないながらもキキに飲ませてもらった。
数度、水差しで喉を潤したところで息を吐く。
「お腹は空いてませんか? しばらく固形物はダメと言うことなので、ジュースやスープならご用意できますが」
「あ……オレンジジュースがいいかな」
「はい、それじゃあ用意してきますね」
キキはいそいそとドアを開くと、ご用がありましたらベルを鳴らしてくださいと言い出ていった。