異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
はぁ、と大きく息を吐いて一度軽く目をつぶる。またお腹に違和感があって、そこに手を当てると微かに温かさを感じた。
手のひらで確かめてみると、傷痕とおぼしき部分が温かい。体温よりほんのりと熱が高くて、トクトクと小さく脈打ってる。
無理に上半身を起こして見下ろせば、服を着ても判るくらいに傷痕が光ってた。
(え……なに、これ!?)
着ているシャツをはだけてみれば、その下は素肌で。うっすらと残る傷痕に直接何かの印が描かれてた。
キキは傷痕が残らないって話していたし、癒すのにだいぶかかったとも言ってた。なら、これは治療中なのかな?
(……って言うか……あたし……いつの間にこんな怪我をしたっけ? たしか……セイレム王国でバルドについてきて……パーティーで)
必死に思い返そうとした時、突然頭にズキッと痛みが走った。ガンガンと内側から叩かれたような重い痛みに、額を押さえながら目をつぶる。
「痛……なんなの、この痛みは」
しばらくしたら落ち着いたけど、また思い出そうとすると激しい痛みがぶり返す。何回か繰り返すうちに、思い出すことを一旦諦めた。
「ま……いいか。キキに訊こうっと」
ぱふん、とベッドに仰向けに倒れてため息をつく。サラサラの上質な寝具はきっとシルク製だ。自分には似合わない。そのうちもっと身の丈に合った部屋へ移してもらおう。