異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
コンコン、とノックの音が聞こえたから「どうぞ」と促したら、驚く来訪者を告げられた。
「失礼いたします。国王陛下のご訪問でございます」
「えっ……あああ、あの! ど、どうぞ!!」
国王陛下で今まで直に会ったことがあるのは一度きり。その予感は的中して、ドアが開いて入ってきたのがハロルド国王陛下だった。
彼は白いローブのようなゆったりとした服を身につけ、平たい帽子を被っている。どうやら単身での訪問らしく、セリナの姿はなかった。
たくさんの従者や警護の人間を従えて入ってきたけど、国王陛下は少数のみを残して後は部屋の外で控えているよう命じる。
「目が覚めたとの報告があってね、居ても立ってもいられずに駆けつけてしまった。気分や体調はいかがかな?」
「あ……はい、お陰様でかなり好くなっているようです」
無意識のうちにお腹に手を当てていたらしく、国王陛下はそちらへ視線を落とし、ふむ、と顎に手を当てた。
「治癒の印の色がかなり変わった。完治は間近でありそうだな」
「治癒の……印?」
聞き慣れない言葉をおうむ返しすると、国王陛下はトントンと指を顎に当てた。
「私が独自に編み出した治癒魔法の一つ。本人の治癒能力を最大限に高め治療の手助けをするだけでなく、他人の力(エネルギー)も借りて組織を細胞レベルで寸分違わず再生させる
これは、主に夫婦や家族などの強い絆があって可能な術。
私がセリナに初めて会った時、彼女を生かす為に編み出し使用したものだ」