異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「この魔法は……お互いに相手へ強い想いが無ければ成功しないのだよ」


あたしの葛藤を見抜いたのか、ハロルド国王陛下は諭すように言葉を重ねる。


「魔法や術というものは基本的に使おうと思えば一定の効果は得られるが、根源にあるのは“想い”なのだ。相手への愛や情や……どんな感情にせよ、深く強く想わねば無理だろう?
自分の生命力を削って分け与えるなど。どうでもよい相手に出来るものなのかな?」

「えっ……」


自分の押さえていた手をどけて、仄かな光を見た。バルドが……生命力を……あたしに?


「ど、どうして……?」

「そこから導きだされる答えなど、たったひとつしかないと思うが?」


ハロルド国王陛下はあくまで自分で答えを見つけろ、とおっしゃる。でも……でも。


そんなの……あり得ない。だって……バルドが。あの彼が……あたしに。


「どうやら、君たちはお互いに言葉が足りないようだね」


ハロルド国王陛下はあたしの傷を見下ろすと、「失礼」とその上に手を翳す。その手のひらから更なる温かさをいただいた気がした。


「迷っているね、あなたは。相手をどうしても信じきれない」

「……どうして」


「どうして解るか? 実に簡単な答えだよ。魔法や術は精神状態と深く関わってくる。あなたの迷いや不信感が揺らぎとなって、治癒術の妨げになっていた」


これで大丈夫、と国王陛下は手を下ろされる。そういえば、確かにさっきより体が楽になった。


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