異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「あの……ありがとうございます」
国王陛下に深々と頭を下げてお礼を伝えた。
「どうやら命を助けて下さったようで……なんとお礼を申し上げたらよいか」
「先ほども話したように、バルド殿下の願いがあったからだよ」
また、国王陛下はその話を蒸し返す。あたしはそれ以上バルドの話をしたくなかったのに。
「それでも……助けて下さった恩人は陛下でいらっしゃいますから。どうやってお礼をしたらいいでしょうか?」
お礼を重ねたあたしに、ふう、とハロルド国王陛下は吐息を着かれる。
「……実を言えば、私だとて純粋な思いであなたを助けたとは言い難いのだよ」
「……え?」
顔を上げなさい、と促されたから、お言葉に甘えて国王陛下を見上げると。彼は少し苦みのある笑顔を浮かべていた。
「……こんな言い方をすればきっと卑怯者になるのだろう。これはあくまでセリナは与り知らぬこと。私個人の勝手な言い分と思い聞いて欲しい」
「はい」
どんなことを言われても、自分が出来ることなら応える覚悟で頷いた。
だけど……
「和さん」
「はい」
「……セリスは……息子は……あなたを庇って死んだ」
「!!」
その瞬間、呼吸すら忘れてハロルド国王陛下を凝視した。彼は痛ましい顔をして、僅かに顔を伏せる。