異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第25関門~契約……してください。
「よかったですね、完治されて」
「う、うん……」
ベッドの傍らではレヤーが侍女に淹れてもらったお茶をすすってる。
巨大な鳥が翼で湯飲みを持つ絵面はいつ見てもシュールだけど、今は笑うような余裕が生まれてくれなかった。
目が覚めてさらに5日経った今、傷はたしかに痕も残らず完全に治ったし貧血からも回復した。
だけど、どうしてだろう。誰もがあたしを下にも置かない扱いをしてくる。真綿にくるむように大切にして、ろくに人に会わせてくれない。それほど重病人ってわけでもないのに、侍女と護衛の兵士をそれぞれ十人ずつつけられてる。
ディアン帝国から同行した侍女長のミス·フレイルと、護衛のロゼッタさんにすら会えない。どころか、バルドに会いたいといくら頼んでも、何かと理由をつけては拒まれる。
なんで? あたしは偽でもバルドの婚約者だから、会えないのはおかしい。
それより違和感を覚えるのは、誰もが半月前にあったことを教えてくれないこと。
あたし自身色んな人に訊こうとしたし、思い出す努力をしようとした。けど、誰も彼もが一様に口をつぐむ。あたしも思い出しかけた途端、あの原因不明の激しい頭痛が襲ってくる。
頭が割れそうな頭痛は吐き気すら伴って、この前は気を失ってしまった。どんなに努力しても、この頭痛が妨げになって思い出せない。
いったいあの日、何があったの?
セリス王子はどうして死ななきゃならなかったの!?
誰か……教えてよ!
そんな大切なことを、どうしてあたしは知らないの!?