異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ヒスイさんは相当力を使ったみたいですね。まだ眠ったままです」
「そう……」
ヒスイは何かのために必死に働いてくれたらしい。そう聞いても、あたしの中ではあまり心が動かない。
今のあたしが知らない話をされても、記憶がない状態だから実感なんてない。あたしの大ケガもセリス王子の死も、きっとその日にあったのに。なぜ、みんなそんなふうに隠そうとするの?
燻る苛立ちもそろそろピークに達していたあたしは、目張りされた窓の外を見てため息をついた。
「もしかすると、あたしって囚人扱い? 馬鹿丁寧な扱いしてるけど、よほどのことをしたんじゃない?」
ため息を着きながらなるべく沈んだ声を出す。うつむいて肩を震わせて……。声も震わせなきゃ。
「もしかするとあたし……ここにとらわれたまま一生出られずにいるの? そんなのって……」
なるべく哀れっぽく声を出した……途端に。
「そ、そんなことありません! 今はハロルド国王陛下の厳命で制限されてますが、いずれ出られますよ!」
案の定、焦ったレヤーはペラッと喋ってくれた。ハッ、と我に返って翼でくちばしを押さえても、もう遅いですよ~。
あたしはガシッ! とレヤーの両翼を掴むと、ふふふと笑いながら目を爛々と輝かせてるんだろう。彼は盛大にひきつった顔をしてた。
「話してくれてありがとう~でも~もうちょっと詳しく教えて欲しいかな? たっぷりじっくりと……ね?」
ギリギリギリギリ。
「ひい~えええ!お助けをををを~~」
レヤーの悲痛な叫び声が隣の棟まで届いたのは……気のせいです、はい。