異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「どうやら、思い当たる節があるようですね?」
「うう……まあ、ね」
隠しておいても為にならないから、すっぱりすっきりと認めておいた。あたし自身もいろいろ知りたかったし。
「実は、記憶がすこーんと抜け落ちてるんだ。たしか訓練所であんたとハルトがじゃれあってる後辺りから」
「なるほど」
レヤーは卵が入ってる包みをまた羽毛にしまい、翼を組んでうむむと唸る。
「失血による酸素不足で記憶が一時的に混乱……なら、脳へのダメージでもっと影響があるはずですからね。ならばやはり力の行使による影響と見るのが妥当だと思いますが。
もうひとつの可能性も考えられますね」
「もうひとつの可能性?」
あたしのおうむ返しにレヤーはコクリと頷く。
「なにかとてもショックなことがあって、自分を護るために無意識に記憶を思い出せないようにしてる……という自己防御です」
「ショックなこと……」
レヤーの言葉を呟きながら、目覚めた直後にハロルド国王陛下に告げられた話を思い出す。
“セリスはあなたを守って死んだ”――と。
なぜ、どうして……? そんな疑問が渦巻いた瞬間、また激しい頭痛が襲いかかってきた。
両手で頭を抱えてひたすら痛みに耐えようとするけれど、頭の中で誰かがガンガンと岩を打ち付けてるような衝撃と痛み。吐き気が込み上げてきて、体が冷たくなり冷や汗が大量に流れる。
「和さん!」
レヤーが慌てたような声を出してあたしの腕に触れた。
「落ち着いて、深呼吸をしてください。緩和する術をかけますから」