異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。






レヤーが百戦錬磨のベテランなのは解ったけど、イマイチ理解しづらいことがある。


「【闇】って言うけど、そんなに厄介なものなの?」

「はい。【闇】は人のこころに巣食うだけでなく、その存在(かたち)まで変えてしまいますから」


存在を変える……か。


レヤーの話を聞いてすぐに思い出したのは、ヒスイの何気ないひと言だった。


“ひとは、変わる。過去がどうあろうが、大切なのは現在(いま)がどうか、じゃ”


たしか、あたしが倒れかけた時にアイカさんのことで言われたんだっけ。


(そういえばあの時、ヒスイはアイカさんが日本人の血を引いてるって言ってたけど。それってどういうことだろう?)


どたばたしていてとても調べる時間はなかったけど、彼女の容姿からすればどう見ても北方系の血筋に見える。仮にアイカさんに日本人の血が混じっていたとしても、かなり薄い何代前かのご先祖様じゃないかな?


(それより……)


レヤーが教えてくれた新しい情報が引っかかる。


あたしが激しい頭痛を感じた時、黒い霧に包まれていたという事実。それは、アイカさんを取り巻いていた霧を彷彿とさせる。


おかしい。彼女は“あの時”あの場にいなかったはずだ。ざっと思い出しても、アイカさんの姿は見えなかった。だけど……。


首都の水晶宮殿を囲む広大な湖を覆った黒い霧。たしかあれはヒスイが拡大を抑えてくれたけど、アイカさんの霧と同質のものだと感じたのは穿ち過ぎ?


まさか……と思う。でも。

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