異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「ごめん……もう大丈夫だから、しばらくひとりにしてもらっていい?」

「はい、それじゃあヒスイさんを起こしましょうか?」


レヤーがとんでもない提案をしてくるから、あたしは思いっきり手を振ってご遠慮申し上げた。


「い、いい! 寝た子は起こすなって言うでしょ。ちゃんと寝て回復してもらわないと困るし」

「そうですか? それじゃあ何かあれば、その腕輪を頼ってくださいね」


レヤーが翼で指し示す先にあったのは、あたしの左手首にはめられたままの緑色の腕輪。そういえば、バルドに貰ってからずっと身につけたまんまだった。


「え、これってただの腕輪じゃないの? ユズには言霊の術をかけてもらったけど」

「それ以外の力も感じます。おそらく、強い守護の力が働いてますね。たぶん、今まで何度か助けられたと思いますよ」

「………」


レヤーに指摘されてじわりと思い返すのは、バルドに斬られた後の出来事。たしかに、この腕輪が輝いて痛みが緩和された気がしてた。


(えっ……どういうこと? バルドはそれを知っててあたしにこれをくれたの?)


それに、バルドはあたしがこの腕輪をしている前提で“わざと”あたしを斬った……?


よくわからなくて混乱している最中、レヤーはそれではと部屋から出ていった。


「何かあれば腕輪に向けて強く念じてください。あなたを助ける誰かに伝わるはずですから」


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