異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
護衛となる近衛兵は部屋の外にいるからともかく、部屋に控えてる侍女は今でも5人いる。午前と午後の交代制というローテーションとはいえ、総勢10人って。いくら友好国の賓客でも明らかに多い。
窓は明かりが入る程度の薄さのカーテンで覆われていて、あたしの力じゃ捲れないくらいがっちりとガラス部分が隠されてる。
(あたしが力を振るったから……ってレヤーは言ってた。もしかすると冗談抜きで囚人扱いかもしれない)
記憶がないからどれほどの力を振るったのか、全然自覚がないけれど。レヤーの見立てでは古代兵器に匹敵する力だってこと。
(それ、かなりヤバくない?)
古代兵器は各国が使用制限するための協定を結ぶくらい危険な存在。そりゃそうだ。下手をすれば世界を焼き滅ぼすって言うんだから。 それと同等の力をあたしが有するなら、こうやって源から隔離して軟禁するのも仕方ないかもしれない。
でも……
ギュッと布団の上で拳を握りしめる。
あたしが自覚を持つには、足りない。
記憶という一番大切な情報が、今あたしの中では欠落している。だから、これがあったと語られても何の感慨もないし、他人事にしか思えない。そのギャップを埋めるには、思い出すしかない。
あの日、あの時。何があったのか、自分が何を考えて何をして何を感じたのか。
つらくても、ちゃんと思い出す。それがあたしの義務だ。
もはやあたしは傍観者だけではいられない。確実に巻き込まれて中心を担う人間のひとりになってる。逃げることだけはしちゃいけないんだ。
そう固く決意をして、深呼吸をしながら目をつぶった。