異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「うぅ……!」


必死にタオルを噛んで悲鳴を押し殺した。汗だくな上に熱い滴が固く閉じた瞼から滲んでくる。


それからは、堰を切ったように記憶が溢れ出した。


自分がどれだけ無力かとうちひしがれたこと。レヤーやロゼッタさんまで巻き込んでしまったこと。そして、新しい襲撃とバルドの厳しい叱責。


そして――


あたしのなかで響いた、なぞの声。


すべてがショッキングで、到底正気で居られなかった。枕を固く握りしめ、何度も悲鳴を押し殺す。たまらなくていたたまれなくて、何度も何度も枕に頭を打ち付けた。端から見たら発狂したと思われるだろう。髪を振り乱してところ構わず頭を打ち付けていたなら。


途中、侍女が何度も様子を窺いにきたけど、あたしは何も答えずに追い返した。到底人には見せられない姿だったし、理解してもらいたいとは思わない。


ただ……


ただ、独りで耐えるにも限界はある。あたしはいつの間にか気を失うほどのショックを受けていたらしく、次に気がついた時はすっかり日が暮れていた。


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