異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
微かな夕陽の明かりで秋人おじさんがいると勘違いしたのは、たぶんあたしの心が弱りきってたのと。幸せな夢を見てしまったせいだ。
もう二度と戻らない、お母さんとあたしと、秋人おじさん三人で暮らしていた日々を。
――ずっと、ずっと誰かにすがりつきたかった。
ずっと、ずっと誰かを頼って、甘えて。抱きしめて大丈夫と言って欲しかった。
誰かに、ただ誰かに。包み込む安心感をもらいたい。どっしりと揺るぎない誰かに寄りかかりたい。
きっと、それは紛れもなく甘えだ。
何もかも放り投げてただぬくぬくと微睡めていたら、どんなに幸せだっただろう。
けれど、あたしには許されなかった。秋人おじさんが消えた瞬間から、あたしは子どもらしさを押し込めて聞き分けのいい子どもを演じた。シングルマザーのお母さんを困らせたくなかったから。
それは、8つの子どもには相当な負担になっていたはずだけど。いつの間にかあたしは自分を押し殺すのが当たり前になって。本当は何がほしいのか、自分でも解らなくなってた。
あたしが欲しかったものは、ただひとつ。
ゆるぎないぬくもり、ただそれだけだったのに。
「ねえ……あたし、って……やっぱり普通の人生生きられないんだよね」
あたしは、秋人おじさんの影に向かって本音をこぼす。今まで誰にも言えなかった胸のうちを。
「普通の……人並みの幸せ。優しい人と結ばれて結婚して子どもができて……それだけでよかったんだ、あたしは。なのに……どうして……どうしてあたしは巫女なの? どうして水瀬なの……」