異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「こんなの……嫌だよ」
握りしめてシワになった布団に、ぽたぽたと音を立てて涙が染み込んでいく。
声を押し殺しながら静かに涙を流していると、影と思っていた秋人おじさんが立ち上がった。
「……思い出したんだな」
その芯の通った声は紛れもなくハルトのもので。あたしはやっぱり、と諦めの気持ちで彼を見上げた。
「……秋人おじさんはもう……会えないんだって……解ってるのに……あたしって、ホントばかだよね」
少しでも、期待したかった。秋人おじさんに会えるって。
でも、現実にそれは不可能なんだ。だって……秋人おじさんは100年前のディアン帝国の成立に貢献して、そのまま初代皇帝のお婿さんになっちゃったんだから。
「おじさん……自分から決めて100年前に現れたんだもんね」
「ああ……おまえがこうならないために、な」
きっと、おじさんは何らかの手段であたしの未来を知った。それは巫女であったお母さんの予言かもしれない。
そして、不吉な未来を回避するために自ら過去へ向かい歴史を変えようとしてくれたんだ。
もう秋人おじさんに会えないという悲しみと、どこまでも深い愛情に止まることなく涙が頬を濡らし続けた。