異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



セリナは優しかった。友人が原因で息子を亡くしても、変わらずに案じてくれる。


だからこそ、あたしは彼女の悲しみが胸にヒタヒタと迫ってくる。感情を押し殺して王妃として気丈に振る舞おうとしている、その苦しさも痛みも。大切な人を亡くした経験のあるあたしには手にとるように解った。


「……王妃陛下、わたしは……っ!」


その場で膝を着いたあたしは、床につきそうなほど深々と頭を下げた。


「申し訳ありません! セリス王子は……わたしの……せいで! どうか、好きなだけ罰してください。償いになるなら何でも応じます。許してくださいなんて都合のいいことは言いません!」

「和さん……頭を上げてください」

「いいえ! わたしは……わたしは」


ぶるぶると震えながら、泣きそうな自分を戒める。泣くな! 泣き落としなんて最低だ。そもそも、あたしにはセリス王子のために泣く資格もないんだから。


「ディアン帝国次期皇太子と言われるバルド殿下の婚約者の頭を下げさせる訳にはいきません。あなたも皇太子妃となるならば、もっと毅然とした態度をお取りなさい」


セリナは相変わらず厳しい言葉でわざと叱ってくれる。こんなところも変わらないな、とちょっとだけ懐かしく思った。


「わたくしが今日お会いしたのは、あなたを責めるためでも謝らせるためでもないの。せめてあの子の最期を……あなたの口から直接聞きたかっただけ」

「……それは」


気持ちはとてもよく解るけど、ただでさえ辛い思いをしてるのに、よりきつくならないかな?という懸念は、セリナのひと言で薄れた。


「あの子の死を自分なりに消化し納得して受け入れるのにどうしても必要なの。あなたもつらかったろうに申し訳ないけれど……お願いできるかしら?」


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