異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。




あたしを想ってくれる気持ちが本物か、秋人おじさんの影響かわからない。だけど、ディアン帝国皇族の血を引きセイレム王国の貴族である彼にだって、相応しい相手がいる。何より、好意を寄せる女の子だっているだろう。


セリス王子を慕うナネットさんのように。


ハルトまでも、セリス王子のようになって欲しくない。あたしのそばにいたら、きっとまたあんな事が起きる。


秋人おじさんにそっくりな彼には、おじさん以上に幸せになって欲しかった。あたしの勝手な思いだけど、それにはあたしが最大の障害になる。


だから、あたしは決してハルトには応えられない。


「本当に、ありがとう……あたしは独りで大丈夫。大丈夫だから……ね?」


もう、そんなに心配しなくていい。そんな意味を込めて彼に笑みを向ければ、ハルトは音が聞こえそうなほどに歯噛みをしてた。


「……なんだよ、それ! 独りでって……なんでそんな勝手に決めるんだよ!!」

「それが一番、いいの。あたしが水瀬の巫女だから……ここで終わりにする。二度と、不幸を繰り返さないために。血は残さない……ここでも、日本でも」


あたしがそう告げると、ピクリとハルトの指が跳ねる。彼はなぜか眉を寄せて、あたしを見てきた。


「……おまえ……それ、マジで言ってるのか?」

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