異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ま、今のあんたに必要なことは息抜き! 日曜のコンサート、大丈夫っしょ?」
「うん、もちろん!」
前々から芹菜にはとあるアーティストのコンサートに誘われてた。あたしは芸能界にあまり詳しくないけど、初来日という外人アーティストの全国ツアー、チケットがあまったからって誘っててくれたんだ。
1ヶ月前からその日バイトを休みにして極力用事を入れないようにしてきた。この5年毎日毎日休みなく頑張ってきたんだもん、1日くらい弾けたっていいよね?
芹菜にコンサートのムービーをスマホで見せてもらったけど、キラキラして輝いて……エネルギーがすごかった。あんな体験ができるなんて、すごく楽しみだ。
「今日のバイトは6時からだよね? 服を買いに行こ! ぜったい似合うの選んだげる」
「うん、よろしくね。芹菜はセンスがいいから任せるわ」
デートじゃなくっても、新しい服を選べるだけで気分が浮き立った。このためにコツコツ貯めた5000円を持ってきたんだ。
おりしも季節は夏休みの直前。開放的な気分になるには充分だった。
(少しはかわいくなって……カレシとか欲しいな。ひと夏の恋じゃなくって、ちゃんとあたしを見てくれる人がいい)
恋を、したい。別に王子さまとは言わない。あたしだけを見てくれる、穏やかで優しい人がいい。そんなささやかな願いがあたしの夢だった。