異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ちゃんと、話そう? あたしはバルドのことを知りたい。あたしのことも知って欲しい……だから」
「…………」
バルドの背中がピクリと跳ねた後、緊張のためか強張る。もしかして怒らせた? と不安を感じたころ……彼の硬い指先を頬に感じた。
「バル……ッ!」
唇に、なま暖かさを感じた。ふわりと優しく、触れるようなキス。どうして? と目を瞬いていると、無表情なままの彼の口元が――微かにほどける。
バルドが……笑った?
自分が見たものが信じられなくて、しばらく呆然としていると。彼の唇が言葉を紡ぐために開かれた。
「おまえの言う通りだったな……たしかに、一方的に感情をぶつけても理不尽なだけだ」
「バルド……」
「だが、今は……」
バルドはあたしの肩を掴んだまま、ゆっくりと身体を倒すとそのまま覆い被さってくる。
「せっかくおまえが素直になったんだ。それを逃す訳にはいかないな」
「えっ……」
バルドの黄金色の瞳には、揺らめく焔が見えた。それは確かに彼の欲を燃やしたものだ――と。身をもって知ることになるけど。
「バルド……ちょ、待って! いきなり」
キャミの胸元のリボンをほどこうとするバルドの手を掴むと、彼はなんだ? と言いたげな顔をした。