異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「ちゃんと、話そう? あたしはバルドのことを知りたい。あたしのことも知って欲しい……だから」

「…………」


バルドの背中がピクリと跳ねた後、緊張のためか強張る。もしかして怒らせた? と不安を感じたころ……彼の硬い指先を頬に感じた。


「バル……ッ!」


唇に、なま暖かさを感じた。ふわりと優しく、触れるようなキス。どうして? と目を瞬いていると、無表情なままの彼の口元が――微かにほどける。


バルドが……笑った?


自分が見たものが信じられなくて、しばらく呆然としていると。彼の唇が言葉を紡ぐために開かれた。


「おまえの言う通りだったな……たしかに、一方的に感情をぶつけても理不尽なだけだ」

「バルド……」

「だが、今は……」


バルドはあたしの肩を掴んだまま、ゆっくりと身体を倒すとそのまま覆い被さってくる。


「せっかくおまえが素直になったんだ。それを逃す訳にはいかないな」

「えっ……」


バルドの黄金色の瞳には、揺らめく焔が見えた。それは確かに彼の欲を燃やしたものだ――と。身をもって知ることになるけど。


「バルド……ちょ、待って! いきなり」


キャミの胸元のリボンをほどこうとするバルドの手を掴むと、彼はなんだ? と言いたげな顔をした。


< 502 / 877 >

この作品をシェア

pagetop