異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「い、いきなり何をするの!」
「何を? 婚約者同士が夜に同じベッドにいるなら、ひとつしかないだろう」
バルドはそんな屁理屈を言いながらも、あたしの抵抗なんかものともせず、キャミソールのリボンをほどく。リボンで留められていた薄い生地は、それだけで肌をあらわにした。
「ぎゃ~待って、待って!」
下りてきたバルドの顔を手のひらで阻止しながら、あたしは必死になって叫ぶ。
「ず、ずるい! あたしだけ恥ずかしい思いをして……ば、バルドだって教えてよ。何を考えているのかを、ちゃんと」
「………」
両手を突っ張ったまま、ぜえはぁと息を乱したあたしに、バルドはフッと小さく息を吐く。
え……また、笑った?
「やはり、とんでもない鈍感力だなおまえは」
バルドはそのままあたしの手首を掴むと、手のひらに唇をつける。え、鈍いって言われた? なんて疑問は、彼の指へのキスで一気に霧散した。
「おまえが言わなければオレも言わない……だが」
指への執拗なキスに、頬からの熱が伝わって頭がぼうっとする。バルドは、その薄い唇から信じられない言葉を出した。
「オレは、おまえを手放すつもりも婚約を解消するつもりもない――二度と、離れられると思うな」
そして、爛々と輝く黄金色の――猛禽類より鋭く熱い瞳であたしを射抜き、捉える。
「おまえは、オレのものだ」
そして、噛みつくようなキスをぶつけてきた。