異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



バルドの心臓……鼓動が……速い。


あたしと、同じくらい。


トクトクトクトク、小鳥のさえずりみたいに鳴ってる。


なんで? だってバルドは余裕綽々に見えた。一方的に押し付けたのはあたしで……余裕なんてまるでなくて。


バルドは仕方なく、義務的にあたしを……だと思ってたのに。


「……どう……して?」


あたしがすこし呆然として呟くと、バルドはあたしの手のひらにそのまま口づける。そして、自分の頬に触れさせた。


「おまえだからだ」

「え?」


意味がわからなくて目を瞬いていると、バルドはコツンと額をあたしの額にぶつける。


「秋月 和――おまえだから、オレの心臓はこうなる」

「バルド……?」


あたしだから鼓動が速くなるって。それって……


少しは……あたしを意識してくれてるってこと?


ただ、それだけ。別に告白されたり愛の言葉をささやかれたわけでもないのに、ばかなあたしは胸を震わせて喜んでる。


何の生産性もない、未来も見えない関係なのに。



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