異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



すると、唐突にエークが停まった。


へ? どうしたんだろうと不思議に思えば、セリス皇子はシッ、と唇に人差し指を当てて視線で前を見ろと促す。

彼のそれに従って前を向けば……そこにあったのは、目も醒めるような光景だった。


ふわふわと無数の光が飛び交っていたけど、それに一定の色はなくて常に七色に変化する。それが、辺りの木々に彩りを添えて仄かな光が周りを照らし出し幻想的な光景を演出してた。


枯れ木に光の花が咲いたばかりか、その根本に池のような揺らめきが現れる。そして、木々に咲く光の花を反射してキラキラと輝いてた。


「ヒカリハナムシです。乾燥した土地に生きる虫ですが、今はちょうど繁殖期なので、ああして求愛行動を取るのです」

「……すごいホタルみたい」


こんな渇ききった土地なのに、こんなにも小さな生き物達が懸命に生きて子孫を残そうとしてる。それは、感動なんてものじゃない。魂を揺さぶられるような体験だった。


(こんな小さな体でも、一生懸命自分のできることをしてる。たとえ本能に従っているだけだとしても……あたしにはできないこと)


だけど……本当に、あたしには何もできないんだろうか?ただ単に違うと逃げるだけで、考えることを放棄してなかった?


そんなふうに考え始めたあたしの肩に、そっとセリス皇子の手のひらが乗せられ。そのまま軽く体を寄せられた。



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