異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「おまえの考えていることなど解っている」
バルドはあたしにギリギリまで顔を近づけながら、より鼓動が速く泣きたくなることを言う。
「だって……あたしは……ずるい女だよ? 契約って……バルドの体だけでも……って考えるような」
じわり、と瞼の裏が熱くなる。彼のまっすぐな視線に耐えきれなくて、ギュッと目をつぶった。
閉じた瞼の上に、暖かさを感じる。バルドがキスをしたんだと気づいて微かに開けば、彼は苦い微笑みを浮かべてた。
「それならば、オレもずるい男だ」
ふわり、とそのまま彼の唇はあたしの頬に降りる。
「どうすれば手に入るか、ずっと考えていた」
「……え?」
一瞬押し黙ったバルドは、あたしにフッと笑う。自虐的とも言える笑みに、戸惑いが大きくなったけど。心臓の鼓動がより速くなったのはどうして?
「……ずっと、欲しかった」
低く、低く。掠れるような声でバルドが呟く。
「ずっと、おまえが――和が欲しかった」
「……あたし?」
「ああ」
バルドの指が、頬を撫でて唇に触れる。スッと滑っただけなのに、熱を点されたように熱くなった。
「欲しいのは、おまえだけだ――今までも、これからも。未来永劫、逃げられると思うな」
そして、バルドは強く宣言した。
「おまえを、オレの妃にする……拒むことは許さない。二度と離れるな」
「バルドッ……ん!」
彼は啄むキスを繰り返し、再びあたしを翻弄する。なにもかも考えられなくなったところで――あたしのなかに入ってきた。