異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
次に目が覚めた時には頭がぼうっとしてたせいか、すぐには状況が掴めなかった。
「うぅ……だるい……」
喉が痛いせいか、出した声はかすれてる。全身が重くてあちこちが痛いし、とてもダルい。指先すら動かすのが億劫だった。
カチャ、と澄んだ音が響く。ピクッと跳ねた指先に、ひんやりとした感覚があった。
「起きたのか。体調はどうだ?」
聞こえたのはバルドの声で、そのまま視線を上げれば彼が差し出したグラスが目に入る。なみなみと注がれた水はよく冷えてるらしく、グラスには水滴がついてた。
途端に強烈な喉の渇きを感じてグラスを受け取ろうとするけど、腕を持ち上げることすら一苦労で。やがて、あきらめてパタンと腕を落とす。
「飲まないのか」
「……ほしいけど……からだが重い……」
「そうか」
バルドは水差しとグラスをサイドテーブルに置くと、何を考えたかベッドに乗り上げる。そしてあたしの身体を抱き起こして、片腕で支えたままグラスを口元に持ってきてくれた。
「焦らず、ゆっくり飲め」
「ん……」
バルドの言う通りに、ゆっくりと水を飲んで喉を潤す。あまり急ぐと噎せるから、と彼もちびちびとしか飲ませてくれなかった。
ひととおり満足したところで息をつくと、バルドはそのままあたしをギュッと抱きしめた。
「まだ、つらいだろう? もう数日は寝ておけ」
「え……でも」
そういえば、なんであたしは寝てるんだっけ? と首をかしげたところで。首筋に顔を埋めたバルドがとんでもないことを言ってきた。
「今朝まで丸3日、オレを受け入れ続けたからな。倒れるのも無理はない」