異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「え、そうだったの?」
「ああ。今はアイカのことは幼なじみで、友達の妻だから何とかしてやりたいと考えているだけだ。異性としては何も感じない。空っぽな女だとは思うがな」
バルドの辛辣な言葉を信じられない想いで聞いた。だって……それならばあたしこそ言われるべき言葉だったから。
「だって……あたしこそ空っぽじゃない! どんなにがんばっても何の役にも立てなくて……誰かを傷つけたり、危険にさらしてばかりで……」
じわり、と涙がにじんでくる。拭おうとした手のひらをバルドの手が止めて、代わりに彼の指が涙を掬う。
「おまえが空っぽなどと、どの口が言う?」
そのまま、彼の指先が頬を伝って唇に触れる。ドキン、と心臓が跳ねてそのまま鼓動が速くなっていった。
「おまえは、懸命に生きていた。常に前を向いてまっすぐに、どんな嵐にも負けず、つらくても逃げず目を逸らさず立ち向かう。そんな気骨のある女だから――オレは……」