異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
でも……今は。
ほんの少しだけ、その決意が揺らいでた。
バルドはアイカさんを想ってないと、そしてあたしが欲しいとちゃんと伝えてくれた。
今まで何も言ってくれなかった不安を吹き飛ばすくらい、たくさんの言葉と想いを。
たとえそれが異性として求められないものだとしても、あたしは確かに胸を震わせた。そのうえ決定的なひと言を欲するのは欲張り過ぎる。
彼があれだけ自分を晒してくれたなら、あたしだってもう少し素直になってもバチは当たらない……ううん、むしろ素直にならないとバチが当たる。
「あ、あの……」
お腹をがっちり掴むバルドの腕を見ながら、うまく回らない頭を叱って言葉を選ぶ。
好きだという言葉を伝えるにはまだ勇気が足りない。それに、バルドを縛り付けたくない。そんな思いでいながら、やっぱりわがままを完全に抑えるのは難しかった。
ドキドキと鳴る心臓に落ち着けと深呼吸を繰り返し、ゴクリと喉を鳴らして乾いた喉を潤す。
「あの……あたし……ゆ、許されるなら……いたい……って思ってる……」
やっと捻り出した言葉が説明不足で、慌てて単語を付け足す。
「あ、あの……! いたいってのは痛覚じゃなくて……場所がってこと。あたし……あたしは、ば、……バルドのそばにいたい。そう思ってるよ」