異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第28関門~よみがえりの儀式。
セイレム王国の地下に、その特殊な空間はあった。
【闇】の襲撃があってからちょうど1ヶ月後、バルドとの契約を終えたあたしはハロルド国王陛下へ申し出た。
“セリス王子をよみがえらせるお許しをください”――と。
謁見の間で自分から頭を下げたあたしに、ハロルド国王陛下は重々しく頷き、最後に苦悩に満ちた顔で“すまない”と呟かれた。
きっと魔術師だからこそ、ハロルド国王陛下も解ってらっしゃるんだろう。
よみがえりの儀式が、どれだけの危険を伴うことかを。
よみがえりの儀式では死者の魂を肉体へ戻すため、術者も魂である世界へ赴く必要がある。それはいわゆる天上界――天国や場合によっては地獄みたいな場所へ行くらしい。その辺りはヒスイに詳しく教えてもらった。
つまり、あたしは身体を仮死状態にして幽体離脱なんてとてもオカルトまがいなことをしなきゃなりませぬ。
でも、物質的な制限のある生身じゃそういった世界へはいけないらしいから、仕方ないっちゃ仕方ない。
もちろん、仮死状態の身体は術で状態をキープされる。
けど、あまり長く離れていると肉体と魂の結びつきが徐々に薄くなり、戻るのが難しくなるだとか。時間には気をつけないと。
セリス王子も遺体が地下の特殊な空間と魔法の作用で、亡くなった時のまま保存されているみたい。