異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



ちなみに、よみがえりの儀式は極秘中の極秘で行われる。水瀬の巫女の力を知られないためと、セリス王子の死を悟られないためだ。

セリス王子は表向き大怪我で療養中になっていて、復帰できる体制は整えられていた。


よみがえりについてセイレム王国で知ってるのは、国王陛下とハルトにセリナ。とごく一部の信頼できる神官と家臣のみ。セリナはあたしを心配して猛反対してくれたけど、どうにか国王陛下が説得してくれたようだった。


もちろん、バルドとヒスイは知ってる。けど、ユズとティオンバルト王太子は知らない。

2人が信頼に足る人たちというのは解るけど、どこから情報が漏れるかわからない以上。儀式に関わりがない彼女たちに知らせることは控えた。友人だけど、ことはいち王子の命に関わる。国家の機密……トップシークレットに相当するんだ。軽々しく話せる内容じゃない。


禊を済ませて専用の巫女の服を身につけてハロルド国王陛下に案内されたのは、水晶宮殿のある首都より少しだけ離れた神殿の地下。ずいぶんと長い階段を降りた後に、水に満たされたガラスのような部屋が見えてきた。


「大丈夫だ、何も怖くはない」

隣で手を引いてくれていたバルドが、あたしの肩を抱いて胸に抱き寄せてくれる。彼は開襟シャツに細身のズボンだけど、靴まで黒づくめで何か不吉ですってば。


だけど、こうしてあたしに大丈夫と囁いてぬくもりを分けてくれる。それだけで、不安がゆっくりと溶けて心が軽くなっていく。


不思議……


バルドがそばにいるだけで、こんなにも心強い。彼の揺らぐことのない安定した存在感が、安心感をもたらす。


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