異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ぶわちいいん! と、夜空に見事な音が響いた。
「あの……え~~っと……?」
あまりに突然な出来事に頭も体も固まってしまったとしても仕方ないでしょう。
何せ、集落に帰ってきた途端に体格のいい女性が勢いよく走ってきたと思えば。
いきなり、セリス皇子にラリアットをかましてエークから落としたんだから!
ちなみにラリアットというのはプロレス技の一種で、相手の首辺りに腕で打撃をかますこと。ということで……セリス皇子は見事なラリアットをお見舞いされ、そのまま落馬(?)なされました。
この間、わずか数秒。
これ、冷静に対処できる人がいたら逆に見てみたい。
というか、いくら落下防止の粒子が薄まっているとはいえ。それを越えて、成人男性をぶっ飛ばす勢いと力って。何かいろいろとすごすぎる。
ってか、これ。どうやって停めればいいんですか!?
アワアワとデタラメに手綱を引くとようやくエークが停まったので、慌てて降りて倒れてるセリス皇子へ駆け寄った。
「だ、大丈夫ですか? セリス皇子、意識は……あたしの声は聞こえますか?」
しゃがんで声をかけても、ピクリとも動かない。もしかしてヤバい状態じゃあ? と焦りだしたあたしの耳に、聞き覚えのある声が入ってきた。
「あちゃー、やっぱやられちまったか」
振り向けば、ガリガリと髪を掻いたハルトがなぜか楽しそうな様子で倒れたセリス皇子を眺めてる。その呑気な様子に、頭に血が昇りそうになった。