異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



不思議だ。


重力なんか一切感じないくらいに、自分の身体が軽くなってる。


光を感じる場所へ自然と引き寄せられ、そこを目指したところでヒスイの声が聞こえた。


《どうやら、うまくいったようじゃな》

《えっ?》

あたしとヒスイの距離はかなりあったはずだけど、すぐ隣から声が聞こえる。不思議に思って目を開いた瞬間――即後悔した。




自分が突然空に浮かんでたら、そりゃ驚きますってば。


しかも、全然見たことがない景色ばかりが見えては瞬時に消えていく。太陽のような灼熱の溶けた惑星もあれば、水に満ちて生命豊かな星もある。砂の世界、凍りついた世界……想像もできない世界もたくさん現れて、すぐに溶けて消えていく。


それは、一定のスピードで流れる川のよう。合間に雲のような曖昧な存在が漂い、たまにキラキラと輝いていろんな世界を照らしていた。


《ちょ……な、何よこれ? 一体なに?》

《愚問じゃな。別の時空や次元――さて。そなたには異なる世界と言えばわかりやすいか。
世界はただ一つだけが真実ではない。幾重にも重なり、繋がり別れておる。ここではその様子が観られる“道”じゃ》

《道?》

《神や御上が通る道じゃ。本来ならばな。人の身で通るのを許されるは、天上人の伴侶の資格を得た者のみじゃ》

《え、そうなの? じゃあ、何の関係もないあたしが使っちゃまずいんじゃない!?》


もしもヒスイが咎められたりしたら……と心配になったけど。彼女は唇の端を上げて笑う。


《問題ない。わらわも頼れる神くらいはおるからの。そやつを使って赦しは得ておる》


ヒスイ……なんかものすごい腹黒く見える笑みなのは気のせいですか?


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