異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
《ま、待ってくださいよぅ》
後ろから聞き慣れたレヤーの声がして、ヘロヘロになりながら彼が飛んできた。
《ヒスイさん、私を置いて突然“道”を開いたんですよ。ひどくないですか?》
《何をいう。そなただとて“道”くらいは開けるじゃろ》
《それはそうですが……》
ヒスイが腕を組んで半目でレヤーを見る。そういえば、ヒスイはもともと着ていた古代日本人のような格好だ。ホログラフィーみたいに透けたまま浮いてる。
レヤーもレヤーでいつもの姿なんだけど、ヒスイと同じように半透明でふわふわ浮いてる。いつもしっかりした肉体なだけに、何だか不思議な気分だ。
《何を言う。なごむも透けておるぞ?》
ヒスイがおかしなことを言ってる……って自分の手を見たら……
《マジで透けてるし!》
かざしてみれば、あら、びっくり。向こう側がはっきり見えますよ~なんて。冗談にしてもキツいから。
《なんか……気持ち悪い》
《そのうち慣れる。そなたもせっかく天上界へ行ける千載一遇の機を得たのじゃ。後悔せぬように、しっかりと己の役割を果たせ》
《………》
たしかに、ヒスイの言う通り。
いつの間にか仮死状態で幽体離脱までしてたなんて。なかなかのハードさですな。
《さ、いつまでもここにいても埒があかぬ。レヤー、先導してやるがよい》
《はいはい。さ、和さん。こちらですよ~》
何だかバスガイドみたく妙に軽く話されて、思いっきり拍子抜けした。