異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
山に近づいた瞬間、バチン! とすごい勢いで弾かれた。
《ぎゃっ!》
《ちょ、レヤー……って!》
レヤーがバランスを崩してきりもみ落下する。当然、あたしはそのまま振り落とされた。
《ぎゃああ! 落ちるう~!!》
手足をバタバタさせても、翼があるわけじゃないから浮かばない。そのまま下に落ちていく――! と目をつぶった時。
《阿呆。手足の力を抜け。そして、自分が浮かぶ様を強く思い描くのじゃ》
呆れたようなヒスイの声が聞こえてきた。ムカつきながらも言う通りにすれば、あら不思議。落ちるスピードがゆっくりになっていき、徐々に体が楽になる。
そして……
壁みたいに叩きつけられる直前、すんでのところで浮かぶことができた。
……って、え!?
ふわりと浮いた自分の体を戸惑いながら眺めてると、ふわふわ飛んできたヒスイが半目であたしを見た。
《ようやく魂がこちらへ馴染んだようじゃな。ここは、強く願えば叶うことが多い。今のそなたは精神体のようなものだからの》
《願えば、実現するの?》
《無論。まぁ、身の丈に合った範囲でなければ無理じゃがな》
つまり、自分が持つ力かなにか知らないけど。その中であれば実現不可能なことはないってことか。
《じゃあ、じゃあさ! なにかお土産持って帰れないかな? ほらさ、天上界に行ってきました~みたいな記念になるもの!》
あたしがわくわくしながら言うと、ヒスイは何故か脱力感満載で肩を落とす。
《あのな……ここは観光地ではないのだぞ。仮にも神のおわします聖なる世界じゃぞ》
《ごめん、ごめん。そうだよね、庶民根性丸出しで》
《まぁ、よい……大神ならばなにかお持ちじゃろ、な。レヤー。山にも入れなかったことじゃし。お目通りを願うかのう》
黒い笑みでヒスイはレヤーの肩をがっちり掴んだ。