異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「世の王なる者?」
《やはり、その存在は失われて久しいかの》
ポン! と軽い音が立つと、ネズミは何故かスズメの姿になってパタパタとレヤーの頭に留まる。
そして。
ブチブチブチブチ。
どうしてか、スズメはクチバシでレヤーの頭をむしりはじめた。
「いたたたたっ! や、やめてください! 余計にハゲ……いたいですって!」
レヤーが翼を頭にやっても、スズメは羽毛をむしるのを止めない。レヤーはますますハゲが広がって、カッパみたいにつるつるになってる。 悲惨……。
「み、皆さんも見てないで止めてくださいよぅ! いただだっ!」
《心配いらぬよ、さて。ナゴムとやら。レヤーのいつもの姿を心の中で強く思い浮かべてみよ》
「はぁ……わかりました」
本物の大神かどうかは半信半疑だけど、とりあえず素直に頷いて目をつむる。レヤーのいつもの姿を思い浮かべ……るのは簡単だから、ちょっとがに股に改造してみた。
「あいだっ!」
ごきゅ、と鈍い音が響いて何かと目を開けば、レヤーが立ち上がってる……というか。
「レヤー、あんたいつの間にO脚になったの?」
レヤーの長い脚が、バレリーナが姿勢を低めた時みたいに完全ながに股になってる。レヤーは涙目で違います! と主張してた。
「いきなり、勝手にがに股になったんですよ。なんでか戻りませぇん……」
しくしく、と滂沱の涙を流すレヤー。そのハゲが治ってると気付いたら、スズメがそうじゃと話す。
《そなたの力じゃ、和。大和の巫女よ。そなたは大和に現れし、世の王なる者の子孫。その力は全ての物質や事象の理(ことわり)全てに干渉出来うるものじゃ》