異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「あの……あ、脚」
「さて、話を戻すと」
おじいちゃんはすぐに復活して、あたしの腕輪について話してくれた。
「そのような上質な翡翠は滅多にないものじゃ。おそらく、贈った者は相当そなたを気にかけておったのじゃな」
「……バルドが」
薄い緑色の腕輪を眺めていると、何だか心が落ち着いて胸があたたかくなる。彼は、ずっとあたしを護ってきてくれたんだ。
そっと指先で翡翠を撫でる。彼が贈ってくれたというだけで、あたしには価値がある。たとえその辺の石ころでも、バルドがプレゼントしてくれた。彼があたしを護ろうとしてくれた。それだけで、ダイヤモンドをプレゼントされたよりも遥かに嬉しい。
「よい顔をしておる」
おじいちゃんはゆったりと頷きながら、あたしの腕輪に触れた。
「やはり……そなたは唯一無二の者と契りを結んだのじゃな。初代はその力を抑えるため、信頼できるパートナーと契りを結ぶことを条件に力を解放することにしたのじゃな」
「つまるところ、信頼できるパートナーでなければ、契りを結んだところで力は解放されぬ……か。やはり、義務だけで契りを交わしても、巫女の力は得られぬわけじゃ。心底信頼し慕う相手でなければな」
聞いてなかったはずのヒスイが、追加で解説をしてくれた。
「人間、完全に相手を信頼するは難しい。他人ならなおさらじゃ。じゃが、そのお陰でその“想い”がすとっぱーの役割を果たし、今までバカなことをする巫女は出なかった。やはり、愛や情を知らねば真の巫女にはなれぬからな」