異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「じゃが、わざわざ“道”を通りこの天上界までやって来た心意気を無駄にさせとうはないの」
おじいちゃん大神は袖をごそごそと探り、そこから何かを取り出す。
「レヤー、持ってるものをここに載せよ」
「あ、はい」
レヤーは翼の脇から布に包まれたものを取り出す。それは、あの例の孵りそうで孵らない危険な卵だった。
おじいちゃんが広げた和紙の上に、布から取り出した卵を置いた瞬間――ぶわっと爆発するように炎が広がる。けど、おじいちゃんは平然として、手にしたお盆でポコッと炎を軽く叩いた。
「これ、相変わらずのべつまくなしに力を振るう。その様子じゃ封印されても懲りておらぬじゃろ」
『無礼な。我をなんて思うておる』
「ただの龍じゃろ」
ぶわり、と西洋のドラゴンみたいな形の焔が現れる。おまけに、すごい響きの咆哮で周りがビリビリと震えた。
「おぬし、白夜(びゃくや)に渡りをつけよ」
『我に命令するか』
「命令なら従うか? そうではあるまい」
『命令は好かぬ』
「では、仕方ない」
おじいちゃん大神は一瞬にして纏う空気が変わった。凛として静謐で、背筋が自然と伸びそうな荘厳な雰囲気。畏れ多い、という言葉を初めて実感した。
「ならば、極光明徳大神として命ずる。雷焔(らいえん)よ、この者たちを導け」