異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第29関門~あなたの大切なひとは…。
雷焔(らいえん)――。
ずっと温めてきた卵の正式な名前がそれだと初めて知った。
「もとは世の王なる者が従える四龍(よんりゅう)の子どもみたいですね」
「四龍?」
「海、空、地、焔。あくまでも便宜上はそう呼んでますが、神をも滅ぼす力のある存在です。その体や意識は次元のどこにでもあり、あまりの巨大さゆえに出現しただけで現れる世界を滅ぼす危険性すらあるそうです」
レヤーが丁寧に解説してくれるけど、話のスケールが大きすぎて思考がオーバーヒートしそう。
神をも滅ぼす力を持つ龍を4つも従えるなんて。世の王なる者って、どれだけすさまじい存在なんだろう?
「にしても、レヤーはえらく詳しいんだね」
「はい。別の世界では世の王なる者と親しくさせていただきましたから」
「へ? そうなんだ」
3万年も生きてるといろいろあったんだろうけど、まさか実際に会ったことがあるなんて思わなかった。
あたしは今レヤーの背中に乗って揺られてたけど、どうも抑えきれずに体を乗り出した。
「ね、前に会ったのはどんな人だったの? 人間だった?」
「和さんとそう変わらない年の少女でしたよ。生き物が大好きで、生けとし生けるものすべてを愛する優しいひとでした」
ふと、レヤーが郷愁めいた顔で遠くを眺めた。