異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「どうした? 急に大人しゅうなって。気味が悪いぞ」
ふよふよと飛ぶヒスイがそんな失礼なことをおっしゃるから、頭の中で何かがキレた。
「いやいや、悪巧みばかり考えていればいいあなたと違いまして、あたしはこれでもいろいろと気遣いしてるんですよ~ほほほのほ。自分勝手にやりたいことをやればいいだけの誰かさんとは違いましてよ」
「ほほう。今日は野猿がよう吠える日じゃな。なんぞ聞こえた気がするが、気にすまい」
「の、野猿って。あんたね! 言うに事欠いて……猿って!!」
「おや、心当たりなくば聞き流せば済むものを。なに顔を赤くしてるのじゃ? ますます猿のようじゃぞ。ああ、嫌じゃ嫌じゃ。品位も風情の欠片もない者と同道すれば、こちらの品性も下がってしまうのう」
ヒスイは扇で口元を隠しながら、嘲りの眼差しをくれやがりますよ! ぐああっ!!
「ムカつく、ムカつく! 最大っ級にムカつく!!」
あたしはレヤーの背中で立ち上がると、ビシッと人差し指でヒスイを指差した。
「あんた、自分の底意地の悪さを棚に上げまくってんじゃないわよ! いくら見た目が美人でも、男が逃げるっつ~の!!」
あたしががなり立ててる間にも、ヒスイは聞いてるふりすらしやしない。彼女がチラッと横を見るから、それにつられてついついそちらを見てしまい瞬時に後悔した。