異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。





《そこで待っておれ》


森の入り口のような場所で雷焔がそう言い、焔で体を形づくる。本体が卵の中である以上、それも仕方ないけど……。


「あぢぢぢぢ! ちょっと、焼けてしまうじゃないのさ!」


あたしの目の前で、立体化するな!

30センチの距離もない真ん前で、とてつもなく大きな炎が燃えてるんですよ。熱いというより痛いくらいの熱だわさ!


「Ouch!燃える! 燃えてしまいます~!!」


何か焦げ臭いと思えば、レヤーの翼とアホ毛と尻尾に火がついて黒い煙が上がってた。


「や、焼き鳥にはなりたくありません!」

「おや。わらわは塩だれがええのう。やはり素朴な味わいが一番じゃ」

「ひ、ヒスイさんたら。ひどいです~私は焼き鳥の素材じゃありませんってば」


レヤーがヒイヒイ言いながら翼でお尻の火を消そうとしてたから、手にしてたお土産(大神謹呈)の布で消しとめてあげた。


「ありがとうございます。助かりました」


ヘコヘコと頭を下げるレヤーは尾羽が焼けて半分になってる。まったく、と雷焔に苦情を言うことにした。


「ちょっと、雷焔! もうちょい離れて……あれ?」


あたしが雷焔に文句を言うために開いた口は、最後まで言葉が出せなかった。


ズン、と地面が揺れ動く。お腹に響く音を発した主は、森を覆う銀色の霧の中から現れた。
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