異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「おい」
ハルトに呼び止められたのは、セリス皇子を部屋に寝かせた後だった。責任を感じて付き添ったけど、ちゃんと穏やかな寝息を立てていて、ホッとひと安心。
どうやら、あの特殊な粒子が体の衝撃をほとんど吸収してくれたから、怪我という怪我はないらしい。安堵したあたしは静かに部屋を出たけど、ドアを閉じる前にハルトに呼ばれたんだ。
「なによ?」
ついついケンカ腰になっちゃうのは仕方ないよね。こいつが散々失礼なことばかり言ってきたんだから。
「ほれ」
「は?」
ハルトが腕を伸ばしてきたから、なにやってんのコイツ、って目で見てあげた。すると、焦ったらしいヤツはムッとした顔で「いいから、手を出せ!」と声を張り上げたから。バカかこいつを追加してあげた。
「……あんたね。セリス皇子の護衛のくせに、寝込んだ彼を起こす真似をしてどうするのよ!?」
あきれて声を潜めながら言うと、慌てて口を手でおさえてる。やっぱバカだわ、コイツ……。
「……と、とにかく。受け取れ!」
ハルトがあたしの腕を強引に掴み、手のひらになにかを載せてすぐに閉じた。
「部屋に帰ってから開けろよ。そうでなきゃ意味がないからな」
さすがに懲りたのか小さくそう言うと、バタンと大きな音を立ててドアを閉めたから。やっぱバカ認定してあげた。