異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「……なんでそんなに上手いんですか」
がっくり肩を落としているあたしに対して、セリスさんは楽しそうに笑ってる。
「いや、たぶん初めてだと思いますけど。コツを掴めばそう難しくありませんよ?」
クスクス笑うその爽やかなお顔がちょっぴり憎らしいデス。
10戦中1勝9敗って……マジで立つ瀬がない。
「あ~どうせあたしはぶきっちょですよ~だ」
いじけて隅っこでふて寝する。まだ可笑しいのか、セリスさんはクスクス笑いながらあたしに簡易の布団を掛けてくれた。
「い、いいですって! セリスさんこそ体調が……」
「少し休んだらずいぶんよくなりました。それより、あなたばかり働かせて申し訳ありません。あなたこそ体をきちんと労らなければ……」
セリスさんはそう言って、火の番をしますと薪を手にする。
「ちゃんと眠って体を休めてください。私なら平気です」
セリスさんは優しく安心させるように笑う。
なんだろう……
やっぱり、彼の笑顔は安心できる。
これだけ優しく笑える人なら、邪心を持ってるなんて思えない。
自分だって大変な身の上なのに、こちらの心配までしてくれる。内心はいろいろあるだろうけど、さっき少し取り乱しただけで今は落ち着いてた。
大人、なんだ。きっと理知的でそれなりの育ちに違いないと思う。物腰も柔らかくて、ところどころ品のよさを感じる。
でも、あたしは決めてた。彼がどんな育ちでも関係ないって。
そして、あたしはセリスさんに口にする。
「あの……セリスさん」
「はい」
「もしも……あなたがよかったら、ですけど」
ゴクリ、と喉を鳴らして口の中を湿らせた。
「……もし、よかったら。あたしと一緒に来ませんか?」