異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
セリスさんが、フリーズした。
薪を持ったまま思いっきり目を見開いてるのは、たぶん驚き過ぎて声が出ないんだろう。
「……私が、あなたと……ご一緒して……よろしいのですか?」
そりゃ、驚くのも無理はないかな。初対面で1日と一緒にいないのに、家に来いと言ってるも同然なんだから。
もし、記憶喪失のふりをした悪人だったら。騙されてひどいめに遭うかもしれない。
でも……。
「はい。あたしはあなたがどんな方でも、本気で困っていると判ったので。山を降りて警察にいくとしても、その間住む場所だってないでしょう?
大丈夫、あなたはあたしが何とか養いますから……まだ中学生なので、義理家族にばれないようにこっそりになっちゃいますけど」
新聞配達と内職を増やさないとなあ、と心の中で算段する。あとは、自分が食べる量を半分にして彼に流せばいっか。給食もパンや持ち帰れるものがあればそれを。 服は格安なものや、義理の叔父が着なくなったものをリサイクルすれば何とかなりそう。
高校生になればバイト……あ、でも。やっぱり就職にしようかな。寮のある職場にすれば、何とかやっていける。セリスさんは遠い親戚だとかにして……って、さすがに銀髪とエメラルドの瞳じゃあ、純日本人なあたしの親戚は難しいか。
あたしがぶつぶつと呟きながら計画を立てていると、いつの間にか暖かな手のひらがあたしのそれに重ねられている。
おや、と顔を上げると……
セリスさんが、花がほどけるようなやさしい笑顔をみせてくれた。
「ありがとうございます、和さん。私……わたくしは……不安でしかたなかったのに、あなたを見ていると大丈夫と思えてきました。とても……励まされました」