異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「そ、そうですか? 別に……大したことは何もしてませんって」
大げさすぎますよ、と手をパタパタと振ったのは照れ隠し。そんなあたしに、セリスさんはなぜかほろ苦い笑みに変える。
「……あなたに想われる方は幸せですね……」
「想われ?……いやいや、あたしほど恋愛沙汰に縁遠い人間もいませんよ。そりゃ憧れもありますけど……どんなに自分に魅力がないかって、わかってますもん」
自分で言ってて、虚しくなってきた。
がさつで色気の欠片もない、日に焼けて筋肉質なのに胸はなくて平坦な体型。唯一の自慢はさらさらの髪だけ……って。
だから、後ろ姿で声をかけられて振り向いてはあからさまに失望される。そんな繰り返しで、期待をするだけ虚しいって気付いた。
所詮、あたしは張りぼて。どんなに頑張っても本物には敵わない。
だから、かな。あたしの大切な人はどんどんいなくなって、気づけば独りぼっち。芹菜がいてくれなかったら、本当の孤独になってた。
「それは、外しか見ない浅はかな人間にしかお会いしてないからです」
いつの間にか、そっとセリスさんに抱きしめられていた。
彼の繊細な指先が頬を拭い、初めて自分が涙を流してると知った。
「あなたの輝きは、外を偽ることで得るものではなく、内面からの本物の光です。偽物の輝きに惹かれる人間は、所詮はその程度の底の浅さでしかありません。だからこそ……あなたに惹かれる人間は、本物です。本当に、心の底からあなたを想うのでしょう。命を賭けても悔いはないくらいに。あなたにはその価値があります。自信を持ってください」