異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「バルド……」
意外すぎて目をぱちぱちと瞬く。
だって、バルドは外交上の付き合いや政務で一分一秒を争う過密スケジュールだったはず。まだ午後の早い時間なのに、どうして?
「あ、あの……公務は? だいじょうぶなの?」
「昼休憩で抜けてきた」
あっさりと白状をした彼は、手にしたトレイをサイドテーブルに置く。お皿には、いろんな果物やスイーツが載ってた。
「そういえば、ロゼッタさんは? 途中でかち合わなかった?」
あたしが訊ねても、バルドはそれ以上話さずに果物をナイフで剥き始める。幾つかの種類の皮を剥くと……。
なぜか、両手でがっしりと全部の果物を掴んだ。
いったい、何が始まるの?
バルドのしたいことが解らなくて興味深く眺めると、彼は手をお皿の上に持って行く。
そして。
唐突に、両手をぎゅう~っと握りしめる。
当然手の中にあった果物は握力により潰されるから、果汁が搾られてお皿に溜まってく。
ギリギリまで搾られた果汁はグラスに入れられ、バルドは黙ってそれを差し出してきた。
「あ……ありがとう」
オレンジやキウイやスイカや桃にパイナップルにブドウ……地球上のありとあらゆる果物に似たフルーツごたまぜだから、なんともビミョーな色あいだけれど。せっかくバルドが作ってくれた新鮮なジュースだ。ありがたくいただくことにした。
バルドは果物を触る前に手はちゃんと洗ったの? ってツッコミはなしでお願いします。