異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。





「お母様のことをもっと訊いていい?」


こんな機会は今後あるか解らないから、あくまでさり気なく訊ねてみた。


「あたしのお母さんはね、巫女ってイメージには程遠かったかな。行動的って言うか、すごくたくましい人だった。うちは貧乏だったから、工夫して何でも作り上げるのが得意でね。タンスとかテーブルとかだって、要らない木材をもらって自作しちゃうんだ。一番すごいのは物置小屋をひとりで建てちゃったことかな。もらってきた廃材で1日で建て終わったんだ」


訊きっぱなしはフェアじゃないから、こちらからもお母さんについて話した。あたしの大切な人を知って欲しいって想いもあって、いろんなエピソードを簡単に話した。


「秋人おじさんが高校の修学旅行で一週間いなかった時、食べるものがなくて困ったんだけど。お母さんは山で山菜やキノコや木の実を採ったり、魚を釣ったりしてきたな」

「オレの母も、サバイバルは得意だった」


あたしの話に釣られたのか、バルドにしてはよく話す。


「6つだったオレを沙漠のど真ん中に置いて、ひとりで帰って来いと置き去りにした。 それまで母上とは何度か旅をしていたから何とかなったが」

「……よく生きてたね」

「毒ヘビに噛まれた時はさすがに死を覚悟したがな」


何でもないことのようにサラリと仰いますが……


普通、大人でも沙漠に置き去りにされただけで死にかねませんけど!?


まして、わずか6つの子どもですよね? 年齢の桁をひとつ間違えてるわけじゃありませんよね!?


「……だから、あたしへあんなむちゃくちゃな訓練をさせたわけね」


出会った当初に課されたとてつもない訓練の日々を思い返して、思わず遠い目になった。


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